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次の日は、これでもかってくらいの晴天が、私の頭上いっぱいに広がっていた。
招待状に添付された地図とスマホのナビを見比べながら、私は駅からの道を歩く。
1キロくらいだから、余裕で歩けるかと思ってたけど、この陽射しを計算に入れてなかった…暑い。
額に吹き出た汗をハンカチでそっと拭う。
「まさか、あんたに先越されるとは思わなかった」
会場について早速、本日の主役に本音をぶつけると、彼女はいつものように緊張感のない顔で、へへっと笑った。
幾ら同期でよく知ってたからって、付き合って3か月で結婚とかびっくりだよ。
普段、遅刻ばっかりしてるくせに、こういう時は行動が早いらしい。
「暑い中ありがとね、咲良」
純白のドレスに着替えた菜津子は、照れくさそうに笑った。
「菜津子、綺麗」
「ありがと」
「咲良も可愛いよ」
「…ねえ、今日って」
私はひっそりと菜津子に耳打ちする。『奴』が来てるかどうか気になったから。
その態度と短い言葉だけで、流石、親友、私の言いたいことがわかったらしい。
「あー彼ね、来ないよ」
一番知りたかった情報を与えてもらって、心底ほっとした。
菜津子が招待するわけはないけど、菜津子の旦那も、透や私たちと同期だから、もしかして…と危ぶんだけど、良かった、透は来ないんだ。
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