エピローグと言う名のプロローグ

5/6
前へ
/67ページ
次へ
「お、来てたのか」 式が終わると、ガーデンでデザートビュッフェが始まってて、スイーツを取りに並んだ私に、課長が声を掛けて来た。 「うわっ」 「なんだよ、お化けでも出たみたいな顔するな」 「おばけでも課長でも、突然出てきたらびっくりします。課長も、来てたんですね」 おー、珍しくぱりっとしたスーツ着てる。フォーマルなカッコしてると、そこそこカッコいいんだから、もっと普段から気を使えばいいのに。 なんて、甚だ余計なことを考えてしまう。 「新郎は新入社員の頃、よく面倒見てたんだ。大学も後輩だしな」 「あ、そうなんですね」 「いい結婚式だな」 「そうですね。菜津子達らしい、のんびりとしたムードの中で、ゲスト一人一人をもてなそうって気持ちが、あちこちにあって…」 あったかくてアットホームな式。 「その分じゃ平気そうだな」 「え」 「いや…密かに落ち込んでやしないかと思ってな」 「大丈夫ですよ」 「そうみたいだな」 「私…多分、透と結婚すれば幸せになれる、って思い込んでたんですよね。付き合ってるから、結婚するのが当然の流れだ…みたいな考えに縛られてて、透の本質全く見えてなかった」 「まあ、失敗から学ぶことも多いってことだ」 そう言って課長は、私の髪をくしゃくしゃする。 「やめてくださいよ~。これでも美容院できっちりセットしてもらったんです」 「あはは。馬子にも衣装だな。なあ、御園」 「はい?」 課長に乱された髪を直しながら、私は課長を見上げた。課長は珍しく、鼻の下を擦ったり、あ~って発生練習したりして、なかなか次の言葉を出してくれない。 そうこうしてるうちに、花嫁のブーケトスのタイミングになってしまった。ブーケ、受け取らないと。 菜津子は私に手を振ってから、くるっと後ろを振り返る。 何人かの女の子が、菜津子の周りに群がる。 ブーケが高々と、青い空に舞い上がって、私は白い花束に手を伸ばす。菜津子が私の方に投げてくれたのと、167センチの上背のおかげで、無事にゲットして、課長のところに戻る。 「取れて良かったな」 「はい。あ、課長、何を言いかけたんですか?」 「あー、だから、お前、俺と結婚するか?」 ……はいぃぃぃ?
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4088人が本棚に入れています
本棚に追加