一つだけの想い

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一つだけの想い

 『どうすればモテるのか?』  それは全人類共通のテーゼであり、その難問の解明および成就こそが、全ての人間が内に秘める悲願。  ……と、カッコつけた言い回しをしたが、正直な気持ちは非常にシンプルで  『モテたい!!』  その一言に尽きる。  では、必要条件として求められるものは何だろう?  顔か? 金か? はたまた内面か?  それは、未だ明らかにされていない究極の謎、謎である。  しかし! こと我々のような小学生においては、最適解とも言える唯一の答えが世間一般で流布しているのだ。  それは『足が速いこと』。  これは数々のネット記事やSNS内で広く伝播しているとともに、俺の姉ちゃんにも聞いて確かめた、確実で信憑性の高い解答だ。  なお、その際の姉ちゃんが見せた表情に若干の憐れみを感じたのは恐らく気のせいであろう。そうであってほしい。  とにかく、正解への道筋を得たからには、俺がやるべきことは唯一つ。  走る。ひたすらに走る。走って走って走りまくる。  勉強? ナニそれ美味しいの?  そんなんじゃモテないことは実証済みだっつーーの。  昨年末の算数のテストで満点とった時、周囲の女子達が見せたノーリアクション・ノーコメントには思わず寒気がしたわ。  さらに、100点の横に先生から添えられた『がんばったね』のコメントを噛み締めながら、生まれて初めて悲壮感という言葉の意味を体感したよ。  モテに必須なのは走ること。ひいては、その結果として得られる足の速さ、それだけだ。  それ以外は必要無い。これからは素早さだけにステータス極振りする!  何かを得る為には、それ相応の代価が要求されるのだから。  ――そして今、そんな俺の野望を叶える為が如く、おあつらえ向きのイベントが公表されることになる。 「ハーーイ皆さん、今月末は楽しい楽しい運動会です。今年も盛り上げていきましょうね♪」  KO・RE・DA☆  うちの学校の運動会では毎年100m走に限り全員参加(強制)。  昨年までは正直『只々ダルイ』という印象しか抱かなかったが、こと足の速さをアピールするには最適だ。  まあタイムを計るわけではないので、クラスで一番かどうかは分からないのは残念だが、それでも必然的に注目を浴びることができるのは大きな利点。  このチャンスを逃す手は無いっ!!
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