魂の価値

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「あ……」 花蓮は頭を抱え込むと、身体を丸めてうずくまった。 あの瞬間を、花蓮は確かに覚えている。 学校帰り、いつものバス停でバスを降りた花蓮は、友達と別れ、帰路を急いだ。 すっかり夜の帳が下りた道を、花蓮は足早に歩いた。 途中、一つだけある交差点で信号待ちをし、青になったのを確認してから横断歩道を渡った。 もう少しで渡り切るというその時、左背後から猛スピードで右折してくる車の気配を感じた。 視線を移した時には、ヘッドライトの明かりが目の前まで迫っていて、その直後、記憶が途絶えた。 最期に、バキボキという聞きなれない音が全身に響いたが、あれは、骨の砕ける音だったのかも知れない。 「映像は以上です」 頭を抱えたまま震える花蓮に、抑揚のない平坦な声が、無情に降り注いだ。 これは、ゲームなんかではない。紛れもなく現実なのだ。 明るくなった病室を見渡し、花蓮は何度も深呼吸した。 「それでは、幸運を祈ります」 「え? ちょっとまっ……」 ぷつん。と微かに音がした後、スピーカーは静かになった。 *** 続きはAmazon Kindle『ぞわっとする短編集』にてお楽しみください♡
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