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魂の価値
――あと一人……。
花蓮は、左手のひらに浮かび上がる『99』の数字を見つめ、心の中で呟いた。
思わず安堵のため息を漏らしそうになり、慌てて病衣の袖口を口元に当てる。
――迂闊に声を出してはいけない。
鼻から静かに息を出すと、花蓮はもう一度左手を開いた。
数字が消えているのを確認し、右手のメスを左手に移すと、手のひらの汗を病衣で丁寧に拭った。
杉浦花蓮。高校二年生。
さっきまで、普通の暮らしをしていたはずだ。
普通に学校へ行き、普通に部活をし、普通に友達と帰宅した。
――それから?
花蓮の記憶は、そこで途絶えた。
帰宅する途中で、何か重大なことが起きたらしい。
気が付くと、花蓮は病院のベッドの中にいた。
「ホスピタルステージへようこそ」
音声ガイダンスのような無機質な声で目を覚ました花蓮は、素早く周囲を見回した。
「病院?」
そこが病院の個室だと気づくのに、さほど時間はかからなかった。
花蓮は上体を起こすと、声のする方に目を向けた。
先程まで着ていたはずの制服は、いつしか病衣に変わっていた。
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