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「数字は、およそ五秒で消えます。決して他人に見られないよう、ご注意ください」
「なんで?」
こちらの声は届かないとわかっていても、思わず疑問を口にする。
「魂を狩ると、相手の持ち数がそのまま移行されます。よって、より多くの魂を持つ者を狩った方が、有利となります」
「そうか。だから、自分の持ち数を知られちゃマズいのか……」
いつの間にか、花蓮はスピーカーの声に聞き入っていた。
――もしかしたらこれは、新手のVRゲームかも知れない。きっと、ログインした記憶すら失ってしまう程の、高性能なゲームなんだ。
花蓮は頭の片隅で、そう思った。
それにしても、そんなゲームは買った覚えがない。
となると、弟のゲームを無断で使っているのか……?
花蓮には、一つ下の弟がいる。
「案外、アイツも何処かにいたりして」
ようやく落ち着きを取り戻した花蓮は、再びスピーカーへと耳を傾けた。
「尚、狩られた魂は、二度と再生致しませんので、お気を付けください」
「狩られたら、ゲームオーバーってこと?」
既に数字の消えた左手を見つめ、花蓮は独りごちた。
「再生された魂は、再び命を吹き込まれ、新しい人間へと生まれ変わります」
「随分えげつないゲームね……」
無機質なその声に向かって、花蓮はため息交じりに呟いた。
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