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「イチゴ狩り、連れて行ってください」
「は?」
この日、研究室を訪れた五条龍一は、研究室に巣くう男・岩国藤十郎の謎の我が儘に遭遇することになった。イチゴ狩りのチラシを持ち、もじゃ頭を盛大に揺らしている。
「イチゴ狩りですよ。行きたいんです。たらふくイチゴ食べたい」
「いや、あのなあ」
お前、一応この部屋に軟禁されているの解ってると、龍一は訊きたい。それに俺は刑事であってお前の保護者ではないぞ。
「あ、私も食べたい」
それに、研究室に戻ってきた藤十郎の助手、物部まりあが元気よく手を挙げる。いやだからと、そう諭すのは無駄だと、付き合いの長い龍一は知っているが、溜め息は出た。
「ちょっと待て。本部に許可を貰わないと」
「やった」
「まだ行けると決まったわけじゃない」
と注意したものの、藤十郎の評価は今や単なる危険な科学者ではない。許可は出るだろう。
「イチゴ狩り、人生初なんですよ」
「ああ、解った解った」
仕方ないなと、龍一はすぐに電話を掛けたのだった。
「そこまではいいんですよ」
「うん」
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