第一部 何で

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「おい。」 "隣の席のコイツが俺を追いかけながら、 声をかけてきた。 俺達は、今、教室から出て、 教室の隣の階段を降っている。 俺は、階段の途中で立ち止まり、 壁に寄っ掛かって、" 「ハハハ(笑)」 "コイツは、笑った。 何故、笑ったのか? それは、俺がコイツの方を向いて、 口の前で、人差し指を立てて、 「シッ」と、発音するときと同じように歯を見せたから。 そして、何故か、「シッ」というよりは、 笑みになってしまっていたから。 そしたら、コイツも笑いだした。" 「ハハハ(笑)」 ──ハハハ(笑) "こうなってしまったら、 もう、笑うしかない。 俺の笑みが、 コイツの笑いを誘い、 コイツの笑い声が、 俺の笑い声を誘った。 これでは、どちらが笑いを誘ったか、分からない。" 「何で、笑ってんだよ?(笑)」 "コイツは、まだ、笑いが抜けないまま、尋ねた。 こっちが聞きたいよ。" ──お前こそ。 "俺は、コイツに歯を見せた。"
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