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坊ちゃんの歩み 2 ( キュリオ談 )
王都に出て、僕はあることを決意していた。
坊ちゃんの会話という致命的な部分をカバーするには、慣れと自信が必要だ。それにはまず、女性との触れ合いを持たせるのが手っ取り早い。
領地にはない娯楽、快楽の宝庫、めくるめく一夜を求めて娼館へと繰り出した。
閨教育は人手のなさで本に頼ってしまっている。
かくゆう自分も童貞だ。
一緒に大人の階段を登ろうではないかと、意気揚々と好みの女性を指名し、戸惑う坊ちゃんには店で一番人気の女性を選んであげた。
各々、別れて部屋に入って数十分後、柔い胸を揉みしだき、さあこれから挿入という段階で、突然部屋の扉がぶち破られる。
犯人は坊ちゃんだ。
固まる僕の肩を問答無用に掴むと、そのまま凄い勢いで店から引きずり出された。
ちょちょちょっ! 僕全裸だからっ! 勃ってるし!
何とか手を伸ばしてかき集めた服を身につけ、理由を聞いたところ「急所を握り潰されそうになった」と、真っ青な顔で呟かれる。
……坊ちゃんよ、それは手淫だ。
大人しくされるがままだったら、口淫という天国をみれただろうに。僕は見た。最高だった。は置いといて。
「自分もするでしょ。手でこう……自慰を」
身振りで伝える。男同士でも恥ずかしいな。何をやってんだ僕は……と、坊ちゃんをチラリと見れば、不思議そうに首を傾げていた。えっ、そこから?!
よくよく聞けば手淫はおろか、婚約者も妻も居ないのにムラっとするのは軟弱な証拠。そういう時は寝る ( 就寝 ) に限る、と訳分かんないことを言い出した。
いやいやいやいや、おいおいおいおい!
健全な男ならする。
婚約者や妻がいなくともムラってなるから!
説得? 常識? とにかく説明しても無駄だった。
子種は妻の腹だけに出すものだ。そう本に書いてあった。朝にパンツが汚れるのはまだ自分が未熟な為で…云々かんぬん……もう知らん。
伯爵家の跡取りと箱入りにし過ぎたか。
その本は帰ったら燃やしておこう。低俗で下世話な本を買わねばならない。
しかし僕の努力は報われなかった。
最初に蹴躓いたせいで、いくら誘っても娼館に行くことを頑なに拒まれる。結果、僕だけが祝童貞卒業を果たすことになるのだった。
目論見は失敗、当然出向く夜会も連敗続き、どうすりゃいいんだと嘆くこと10年。
ついに奇跡が舞い降りる。
初めはゾッとした。
シーツに包まれた女性を担いで現れた坊ちゃんに。
えっ、生きてる? 殺した? 思いあまって攫った? などど、恐ろしい事態が浮かんだ。すぐに否定してくれたから安堵したものの、その後に続いた告白に度肝を抜かれる。
彼女を抱いた。無理やりだ。理由があって出頭出来ないが罪を償うため俺は死なねばならない。
腰の剣を掴み己の首に突き立てる。
まっ、待っ、待ったあぁぁぁぁーーーっ!!
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