蛞蝓を愛する妻の話

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蛞蝓を愛する妻の話

 私の妻、美香子は美しく聡明で、てきぱきとしています。 家では私も料理や掃除などを手伝いますが、ふたりで動いていても手際よくしているのは美香子のほうです。あなたは細かいところが気づいていないわ、と注意されることもしばしばあります。名は体を表すと言いますが、美しい香る子、と書く妻の名前は本当に、その通りだと思わされてしまいます。  知り合ったきっかけは、街コンでした。ハイキングコースのある山で、登山デビューというか、山登り初心者みたいな人たちが集まって男女をマッチングさせるイベントでした。  まあ、街コンではなく登山サークルというか、イベントと言ったほうが正しいかもしれませんね。  山道で、単独行動は禁じられていて、私は妻の、当時知り合ったばかりの女性であった美香子と同じ組になりました。当然、マッチングイベントなので男女比率は組内で同じでなくてはいけません。私たちがいた組は男が3人、女性が3人の計6人でした。誰かしら、狙っている異性でもいたのでしょうか、自然観察や景色をめでるなどのゆるやかな醍醐味をよそに、身体を寄せ合ってべちゃべちゃと喋っていたのです。
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