(6) 雲のち雨

2/63
前へ
/63ページ
次へ
 いつもの木曜日。今日も図書室は賑やかだ。  いや、図書室が賑やかでどうするんだ、と内心でツッコミながらも、私はひたすら作業に没頭していた。特に急ぎでもない作業を、だ。  藤沢先輩は相変わらず隣で受付業務で大わらわ、私は私で黙々と単純作業をこなす。  藤沢章臣(ふじさわあきおみ)握手会(と私が勝手に命名してるだけ)はいつものこととはいえ、私のこの状態は普通ではない。  私がこういう状態に陥っているのは──先輩の懸念が現実のものとなってしまったからだった。
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加