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2.5話ㅤ空を写す鏡
一週間降り続いた雨が嘘のように、空はどこまでも青々と晴れわたっている。
むせ返りそうなほど濃密な新緑の薫り、初夏の陽光。所々にできた水溜まりを避けてゆっくり歩く。水溜まりに写る五月晴れの空。なんだかまるで、道端に空のかけらが落ちているよう。
水溜まりの一つをめがけて、足元の丸い小石を蹴り込む。ぽちゃん、という音とともに幾重もの水の輪ができて、たちまち鏡面のような空が崩れる。
あっけない。
たとえば、ほんの少し爪先で触れただけで転がってゆく小石も、小石が落ちただけで崩れる水面も、毎晩のように見る夢も、みんなあっけない。私自身も。
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