Honey in a bottle

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「たしかにマスターは、酸いも甘いも噛み分けた感満載だよね」 数席離れたカウンターで、今日もダンディなマスターは、マダムの話し相手をしている。 「若い時から接客業してるし、色んな人を見て来たって言ってた。だから、人を見抜く力がすごいんだよ〜」 またルイ君はヒヒッと口角を上げて笑う。 「あさひさんの彼氏見て、もしかして……」 「ん?!彼氏はいい人だもん!失礼な!」 何を言いたいか察知した私は、眉間にシワを寄せて反論すると、ルイ君はアハハと笑った。 「冗談だよー。信じてるんだね、彼氏の事。それにさ、あさひさんの彼氏だからきっといい人だよね」 可愛い事言うじゃないの、この子。 ほんと、人垂らしというか、なんというか。 今はアルバイトで、大学を卒業したら違う仕事に就くのだろうけど、この子を見ていて分かるのは気配りはできるし、すぐ懐に入ってくるし、接客業って天性の仕事なのかもと思う。 そう考えると、ルイ君を雇っているマスターは、確かに見る目が抜群なのかも。 「あさひさん、今幸せ?」 突然、真面目な事を聞くルイ君。 「もちろん、幸せだよ」 恋人に愛されていると感じる今日。 仕事も、大変な事も沢山ある。 だけど、やりたかった職業について、生徒達の将来に携われている今。 他人から見れば、平凡な人生なのかもしれないけど、私は心から「幸せ」だと言える。
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