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最終的にソレはあまつさえ、――あまつさえも。……人の努力次第で寿命が伸ばせることを流布した。実質的に人類の夢を叶えたも同然だった。
――その段階ではもう、ソレの告げる違和感を嘘だと思うものは誰一人いなくなっていた。私も現実を見ている今では嘘とは言わない。……言えない。言う資格などないのだ、恐ろしいことに――。
そうして。人々はソレが与える恩恵にばかり目が行き、その異常性には全く気付くことはなかった――。
――そう、異常なのだ。
まったく、誰が信じてくれるというのか。数多の知らぬ文明が過去に存在していたとて、我々ほど異常な文明などなかっただろうに。もはやこれが嘘だとは言えないが、これだけは確信している。
――この世界はどこか奇妙にズレはじめている。
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