日和見日和

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日和見日和

 カーテンを開けると、部屋がゆったりと明らむ。外を見ると、青い空に輝く太陽──なんてものはなく、ただどんよりと灰色の雲が広がり、窓の水滴が風景をぼやかす。テレビで天気予報を確認。雨のち曇り。午後の降水確率は85%。…よし。  深呼吸したのち、外へ出る準備をする。今日なら彼もあの喫茶店に来るだろう。この天気なら。 「おお、白野も来たんだ。」  喫茶店に着くと、彼はもうカウンター席でスマホを弄っていた。洒落た喫茶店に合わないスポーツウェアに、短く刈った髪。こんな格好なのに、コーヒーを飲む姿はなぜか様になる。  「今日は練習できそう?」 私が聞くと、彼は顔をしかめた。 「少なくとも午前中は無理そうだな…」 彼は同じクラスの陸上部である。休日はグラウンドで練習なのだが、雨だと練習は中止になる。学校が雨天時のグラウンド使用を禁止しているからだ。しかし、雨が止めば基本グラウンドは使える。今日みたいな微妙な天気の時は、雨が止むまで彼はこの喫茶店で暇潰しをするのだ。  ダージリンを注文すると、彼の2つ隣の席に座り、本を広げる。彼はスマホを弄り、私は小説を読む。時々他愛もない話をして、雨が止めば彼は学校へ向かう。  晴れてると彼は学校へ行ってしまう。でも、ただ雨が降るだけでは彼はここに来ない。彼が日和見するときしかここでは会えないのだ。  来週もこんな天気でありますように。そう願いながら、私はこの日和見日和を満喫するのである。      
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