プロローグ 〜稲垣大介という人生の終焉〜

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プロローグ 〜稲垣大介という人生の終焉〜

身体中が痛みに覆われている。 そんな表現が、今の俺の状況に合致していると思う。 1960年代初頭(昭和30年代後半)、東京オリンピックの開催決定に、胸を踊らせていたのも記憶に新しいころの、夏休み。 大阪のとある山道の斜面に俺はいた。 いや、いたと言うより正確には転がっていた。 先程まで自転車に乗って、部活の練習のために高校の運動場へと向かっていたはずだが…… ガンガン痛む頭を働かせて、俺は記憶を辿っていく。 ……そうか、あの時あの大型トラックに轢かれたんだっけ… 少しずつ記憶が蘇ってきた俺は、自分が事故に遭ったのだと分かった。 取り敢えず、身体の負傷具合を確認しねぇと… そう思って身体を起こそうとすると、何かで固定されているかの如く、一向に起き上がることが出来ない。頭の痛みもズキンとより一層酷くなった。 何処からか出血しているのか、段々と意識が遠ざかっている。 まさか……!!? 意を決して俺は、恐る恐る頭側部に触れる。 そして、最悪の事実が分かった。 ー俺の頭には、不法に投棄されたと思われる、傘の骨組みが突き刺さっていた。 「ぎゃああああああああああああ!!!!!」 俺の声はこだましながらも、木々の中に吸い込まれていった。 走馬灯なんて見もしないまま、俺は意識を失った。 ------------------------------------ 稲垣 大介(いながき だいすけ) 前世での、本作の主人公。享年17歳。 身長163cm、体重52kg。(死亡当時) 高校野球部の主将兼投手。 家族構成は父、母、兄と妹の5人家族。 兄とは異父兄弟であり、兄の実の父親は戦死している。 恋愛面は奥手で、現代でいう『草食系男子』。 ただし、当時は女々しい奴として揶揄いの対象であった。 一応彼にも好きな子はいたのだが、告白する勇気が持てず、結局恋を実らすことなくこの世を去っており、この事を含む前世での出来事が、来世での彼(彼女?)に強い影響を与えている。
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