今世 Ⅰ《幼少期》〜清水 千佳の人生の始まり〜

2/4
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
俺はその女に声を掛けようとした。 「あー、あおぅー」(あ、あのぅー) …口が思うように動かない。事故の影響で麻痺しているのだろうか。 俺は自分の口周りに触れてみた。触られている感覚はあるから、どうやら麻痺ではなさそうだ。 それより気になったのが、俺の肌触り。 やけに柔らかくて、もちっとしている。 自分の手を見て俺はとある可能性を見出した。 …ひょっとしてこれは転生というものかもしれないと。 小説の中で、昔読んだことがあったくらいで、 実際に起きるとは考えてはいなかった。 何はともあれ、これが転生という事象だとすると、目覚めてからの全ての出来事に説明がつく。 頭が痛くないのは、転生し新しい身体となったから。 「ちかちゃん」とは、俺の今世での名前の呼び名。 この女の正体は俺の母親で、軽々と持ち上げられたのは俺の身体が赤ん坊だから。 この部屋が見たことのないもので満たされているのは、この世が俺からすれば未来の世界であるため。 たったこれだけのことを推測しただけなのに、もう眠くなっちまった。 そういえば赤ん坊は1日のうち2/3以上を寝て過ごすんだっけ。 ならば寝よう!暇だし! こうして俺は、また眠りに落ちていった。 ------------------------------------ 清水 千佳(しみず ちか)_1 今世での、本作の主人公。年は〜5歳。 清水家の長女として誕生。 家族構成は父、母との3人家族。 後に弟がうまれ、4人家族となる。 生後何ヶ月あたりで、自分が転生者であることを自覚する。その後周囲の大人からは「年の割におとなしい女の子」と認識してもらうようになるも、本人はというと不服である。 乳児期の頃は不自由極まりなく、退屈な生活を送っていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!