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 戦いの様子を呆然と見守っていた町民の一人が、誰に向けるでもなく話し始めた。 「勇者様一行が凱旋されたときの席で『パーティーのなかで一番手合わせをしたくない人は誰か』という質問が投げかけられたんだ」  狩人は手近に転がっていた長剣を拾い上げると、戦意を失った山賊たちに近づいていく。 「暗器が得意な商人様や一騎当千の火力を誇る魔法使い様は、自分の力を見せる前にやられてしまうからという理由で、狩人様と答えられた。そして、あの剣聖と呼ばれる剣士様も狩人様の名前を挙げられたんだ」  狩人がすれ違うたびに、山賊たちの首や胸から血しぶきが上がる。 「『どうして狩人様なのか』と質問が重ねられた。皆、勇者様の名前が挙がるものと思っていたから。すると剣士様が『純粋な剣の戦いなら負けません。しかし、あの神速ともいうべき鞭術と多彩な武術を駆使されれば、私とて防ぎきれるかどうか』と説明してくださったんだ」  狩人はおもむろに足元の石を拾うと、紐状の布を巻きつけて投擲した。石は矢に負けず劣らずの速度で、物陰で弓を構えていた山賊の頭蓋を砕いた。 「さらに弓兵様も『俺もあいつとはやりたくないね。あいつの技は自然のなかで培われたもんだ。戦で磨いた俺とは技の本質が違う』と、言葉を継いだ」  時間にしてほんの1、2分。そこに広がるのは、まさに死屍累々。 「こ、こんな……英雄がこんなこと……」  最後に残された山賊が、涙を浮かべて辺りを見回す。 「剣士や僧侶あたりなら、なんとか殺さずに鎮圧しようと奮闘しただろう。私だって、最初はそう心がけた。けど、あいにく……私は畜生を屠殺することに躊躇いがない性質でね」  芋虫のように這って逃げる山賊の背に向けて、狩人は容赦なく刃を突き立てた。 「お前たちは、やり過ぎた」
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