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日々是好日。
その日その日がよい日なのだという意味だ。
晴れの日はもちろん、雨の日も、雨音に聞き入ったりして。
世界の終わりの日でも、かえって生きていられることに感謝することができたりね。SFでありそうな話。
日々是好日。
この言葉を教えてくれた女の子は頭のいい、別の中学校へ行った。こんな言葉を教えるから、どんな日でも、ふと彼女のことを思い出してしまうのでずるいと思う。
彼女は今も幸福だろうか。
もちろん、そうに違いない。
日々是好日。
突然、僕はこの言葉を教えてくれた女の子と再会する。彼女はやつれているように見えた。これから塾に行かなければならないの、と彼女は言った。
「日々是好日」
キャンディの袋から、一つ彼女に差し出しながら僕がそう言うと、彼女はむっとして、
「そんな言葉、口先だけよ!」
と振りはらった。
「……ごめん」
と彼女が落ちたキャンディをひろう。
僕は走り去る彼女を見送る。
日々是好日。
その日その日がよい日なのだという意味だ。
しかし、そんなことなんか考えたくもない日はどうすればいいんだろう。そして今思えば、そんな日に決まって悪いことは起こった。
そんなわけで、今この言葉を思い出している。一種の厄除けとして。
彼女は今幸福だろうか。
「口先だけよ!」
と彼女はまたキャンディを落とすだろうか。
最初に教えてくれたとき、すごくわかりやすかったはずなんだけどなー。
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