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貪婪師匠
先生が寝込まれて今日で十日になります。
白井さんも、「今回は長い…」と溜息を洩らしながら頭を抱えておられます。
毎日色々な珍しいモノをお見舞いに持って来られる白井さんが気の毒に思え、先生の寝室のドアを叩いても、天岩戸よろしく先生が出て来られる事はありませんでした。
先生の寝室に食事のお膳を運ばれる希世さんだけが、唯一先生が生きておられる事を確認出来る存在でした。
希世さんが先生のお膳を引いて寝室を出て来られたのがわかりましたので、私は書斎の戸を開けました。
「如何でしたか…」
希世さんに訊きますと、希世さんは首を静かに横に振られるだけでした。
「そうですか…」
私はそう言うと、書斎の奥の椅子に座られる白井さんを振り返りました。
白井さんはまた大きく溜息を吐いて立ち上がられました。
「今日は帰ります。また明日出直しますので…」
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