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4.鳴くのはカラスの勝手でしょ
続いては、親の教育とは大事なものなのだと痛感させられた話である。
タイトルを見て、ピンと来た方もいるかもしれない。
ザ・ドリフターズの『8時だヨ! 全員集合!』の名物コーナー、『少年少女合唱隊』で志村けんさんが放つお決まりのセリフである。
初めて聞いたという方は、多分動画か何かでご覧いただいた方が早いと思う。
一応、ザッと説明しておくとドリフターズのメンバー(いかりやさん除く)や、ゲストの有名人が、アップテンポなリズムに合わせて早口言葉を披露していくコーナーである。
ラストは決まって志村さんで、変な声で笑いをかっさらっていくのだが、歌い終わると観劇している子供たちとそろって『七つの子』の替え歌を歌うのだ。
♪カラス、何故鳴くの?
カラスの勝手でしょ
ここで登場するは、我が母である。
母はドリフ、そして志村さんの大ファンだ。
あれは、私が小学1年くらい、弟が幼稚園生くらいだったか。
毎週水曜日、母は学校から帰ってきた私を連れて耳鼻科へ行っていた。
幼い弟を1人で置いて行くわけにもいかないので、自然と親子3人で行くことになる。
かかりつけの病院は、今の家から行くと電車で2駅。
平日の昼間なんて、電車も空いている。
事件は、帰りの駅のホームで起きた。
親子3人はホームの後ろの方で電車を待っていた。
周りに人はいない。
どんな話の流れだったかは忘れたが、弟が母に七つの子の歌詞を教えてくれと言いだした。
『カラス、何故鳴くの』の続きを知りたいという。
私も、その続きは知らない。ぜひ知りたい。
母は何のためらいもなく『カラスの勝手でしょ、カーカー』と歌ってのけた。
駅のホームで。
最後の『どうも、ありがとうございました』まで言って、キチンとお辞儀する再現っぷり。
子供たち、大ウケ。
私も弟も、それがドリフのネタだとはその時はもちろん知らない。
ただ、母が明らかにふざけているのはわかったし、アレはやっぱり面白いのだ。ことに子供のツボにはまる。
弟はぎゃはは、と笑いながら『絶対違う! ちゃんと歌ってよ!』と文句を言い続けている。
何だか竹中直人さんの『笑いながら怒る人』みたいだ。若干笑い要素が強めだが。
終始、母は一貫してカラスの勝手だという主張を曲げなかった。
志村けんがそう言ってたんだから、そうなんだといったところか。
この母のおかげで、私は大人になるまで七つの子の正しい歌詞を知らずに育ってしまった。
学校でも習わず、聞く機会もないまま時だけが流れた結果、私の中の七つの子の情報は『カラスの勝手でしょ』しか残らなかったのだ。
そのせいで特段困ったことがあったわけではない。
しかし、『そう言えば正しい歌詞って何だろう』と調べ、動画サイトで志村さんのネタを見て、ああ、あれはこういうことだったんだと全てに納得がいった時の脱力感は、今思い出しても笑える。
親の教育というのは大事だ。
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