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さて、父の日の1週間前。梅雨を思わせる雨模様の中、私はパンツを買いに出かけた。
高いものを買う必要なんてない。
スーパーの2階にある、2組680円とか3組980円とかの普通のトランクスを大量購入すればいいのだ。質より量だ。
毎年利用している売り場に向かい、私はマスクの下で口をあんぐり開けた。
な、売り切れているだと……?
私が求めているのは、LLサイズのトランクスである。
残っているのは、MやLサイズ、もしくは1枚1000円以上のお高いやつである。
サイズを妥協するか? いや、それはまずいだろう。
高いのを買うか? いや、もったいなさすぎる。
瞬間、私の中で『ミッション・オブ・パンツ』が発動された。
雨の中、駅周辺でトランクスを探し回る私。
何してんだか、と冷静になってしまっては終わりである。
求めるは、安いトランクスだ。間違っても、ブランドもので妥協してはならない。
別のスーパーも覗いてみた。
ない。
ふと、スーパーの上階にしまむらがあるのに気づいた。
覗くだけ覗いてみるか……。
これでなければ、思い切って別の駅に行くしかあるまい。
半信半疑の私を、エスカレーターは3階まで運んでいく。
フロアのほとんどがしまむらだ。
しまむらに来るのは、今回が初めてである。
レディース、メンズ、キッズ、外着から部屋着や下着から色々そろっている。
無論、私が一直線に向かうは、紳士ものの下着コーナーだ。
こう書くと、何だかあらぬ誤解を受けそうだが、事実なので仕方ない。
パンツはどこだ。違う、ボクサーじゃない、トランクス……。
あった!
ワゴンの中に並んでいる2組セットのトランクス。
これだ。私が探していたのはこれだ。
ありがとうしまむらよ。子供服しかない店と思ってたけど、とんだ誤解だったよ。
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