32人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
適当に手に取って選んでみる。
LLのトランクス……ん?
前開き?
何やら昔、父が前開きを嫌がるとかなんとか聞いたような……。
いや、しかし今はほとんど前開きだからもういいんだと母が言っていたような気も……。
確かに、陳列しているトランクスは全て前開きタイプだ。
しかしどうして、私は自分で履きもしない男性もののトランクスを前に、こんなにアレコレ悩まされているのか。
恐るべし、『ミッション・オブ・パンツ』。難易度高めだ。
結局、母の声に従い前開きを素直に買った。
もうこれ以上探すのは、さすがに辛い。
履きたくなければ、履かなきゃいいんだ。
さて。
いくら父には何あげたっていいとは言えど、さすがにパンツだけはちょっと味気ない。
安物のTシャツでも一緒に買おうか。
シャツなら、外着用にも部屋着用にもいろいろ使える。
下着コーナーから、シャツコーナーへ移動する。
どんなシャツなら変じゃないか、手にとって選んでみるが――。
まずい。
父の顔が思い浮かばない。
全く忘れてしまったわけではない。
年に1度は会っているし、顔自体はおぼろげながら出てくるのだが、どうもスウェット姿の家バージョンしか出てこない。
外着のイメージが出てこないのだ。
もう何なんだこれ……。
無難に、白ベースのTシャツを選んだ。
父のシャツには白が多かった気がするので、それに乗った形である。
いいや、嫌なら着なきゃいいのさ。
ようやく肩の荷が降りた私は、レジを探してまたしばらく店内をさまよったのであった。
最初のコメントを投稿しよう!