夜明けの冬空

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夜明けの冬空

 2020年12月14日。  給料日の前日。  いや、失礼。それは話に関係なかった。  時間は6:20。  私は、仕事に行くため、玄関から外に出た。  東京の最低気温は5.5度。  翌日から、さらに強烈な寒波が来ることになるのだが、これでも寒いと首をすぼめる。  ふと東の空を見る。  空一面を覆う雲に、目を奪われた。  さて、それがこちらの写真。  皆さまには、この雲がどんな風に映るだろうか。 faed9cc6-fd56-4a2b-aa9b-b88a61c33ba4  私はこれを見た瞬間、手みたいだと思った。  天から大地に向かって、手が伸びているイメージ。  何か、ハリウッドの映画にも出てきそうだ。  手と呼ぶには、薬指と小指が若干切れているし、先が細いからカッパの手のようにも見える。  それが、不思議な世界からやって来たような、恐ろしさとわくわく感の混じったおかしな感覚をくれる。  朝日のおかげで、陰になった雲が灰色なのもまたいい。  写真を撮った後もしばらく雲を見ていたが――ふと、我に返った。電車に乗り遅れるわけにはいかない。  そそくさとその場を離れて、足早に道を歩く。  2、3分ほど歩いてもう1度見上げたら、あの雲はもう姿を変えて、消えていた。  とある、冬の朝の風景。  こういう風景に出会うと、何となく想像力が働く。  何に見えるか、とか、ここから物語をつくるとか。  と言いつつ、この雲から何か思いついたかと言われると、全くである。  所詮、私の力なんてそんなものだ。  そう言うわけで、写真そのものをまんま、こちらでご紹介した次第であった。
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