ピンチハンガーの悲劇

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「??」  え、何これ。割れた?  熊野、ピンチハンガーを持ち上げたまま、呆然と突っ立っている。  まだ洗濯物、残ってるのに。  実家にいた時も、何度か買い換えていた記憶はある。  しかし、はさみが取れたとか、どこかが欠けたくらいの損傷で、こんな見事に真っ二つに割れたところは見たことない。  いや……あの、空手じゃないんだからさ。  誓って申し上げよう。  私が力任せに壊したのではない。床に落ちた衝撃でこうなってしまったのだ。  落としただけで、この大破っぷり。そんなに酷使していたのだろうか?  あまりに見事で、そのうち笑えてきてしまった。  シンと静まり返った室内で、1人壊れたピッチハンガーを片手にうひゃひゃと笑う、日曜の夜9時。  持ち物も持ち主も壊れている。とんでもない光景であった。  ひとしきり笑った後、これらをどうにかして干さなければいけないことに気が付いた。  一瞬、セロテープでつけたら使えるか、などと小学生みたいな発想をしてしまい、慌てて消す。  まだ若干、動揺しているらしい。  タオルハンガーにかかっているバスタオルに少し詰めてもらう。残りは、普通のハンガーをフル動員して、どうにか全員干し終えた。 「やれやれ」  大体、日曜の夜に壊れるとは、タイミングが悪い。  まあ、仕事終わりでも買いに行けばいいのだろうが、土日休みの私としてはイレギュラーな買い物は、週末に行きたいのである。  しばらくは、ハンガーを駆使して干すしかなさそうだ。  それにしても、見るたびに笑えてくる。  この可笑しさを誰かに伝えたくて、私は写真を撮り、実家の母に送った。  母「ハハハハハ~( ̄▽ ̄)」(まま)  うん……その反応が正しいと思う。  ちょうどいい。来週は母と会う用があるから、母にも一緒に選んでもらおう。  とりあえず、今日は飲んで寝よう。そうしよう。  そして、翌週。  現在、2月6日昼の12時。  買いに行ってきます。
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