32人が本棚に入れています
本棚に追加
滞在、参拝なども含めて、往復およそ2時間と少しかかった。
時刻は午後1時半を過ぎている。
完全に、お昼を食べ損ねてしまった。
まあ、仙台に戻って、休憩しつつ、お茶しつつ、甘いものを食べるでもいいかもしれない。
食いしん坊で名を馳せている熊野であるが、実は旅行中はお昼を抜いてしまうことも多々ある。
その代り、朝と夜にたっぷり食べているのだが。
足に疲労がたまりつつあるのを感じながら、私はのんびり駅に向かった。
人混みを避け、少し遠回りして歩く。
うん、こういう景色もいい。
観光として楽しめる風景も好きだが、私は出先の住宅街や、何でもないごく普通の道を歩くのも好きである。
その方がかえって、人が少なかったりするのでなおよしだ。
観光地が、とっておきの非日常的な風景であるのに対し、日常的な風景はそこに住み活動する人たちを感じさせてくれる。
遊びに行くだけの地ではないのだ。ここに住む子供にとっては、この道は親しみ慣れた通学路で、いつか大人になったときに懐かしむ大事な思い出となるのかもしれない。
ここに住む人にとっては、むしろ私の住み慣れた東京の方がよっぽど非日常的なのかもしれない。
物の見方を1つ変えるというのは、なかなか面白いものだ。
……ここまでお読みいただいて、熊野はずいぶんあれこれ考えているな、と思われているかもしれない。
何のことはない。
1人だから、頭の中でぐるぐる考えるしかやることがないのだ。
感想を言う相手もおらず、かと言って1人でベラベラ話し出すと、駅前の交番に不審者情報が殺到する恐れがあるのでそうもいかない。
それでも、周りに人がいないと平気で「うわあ」と感嘆をもらすことはある。なかなかギリギリだ。
最初のコメントを投稿しよう!