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そんなギリギリで生き続ける熊野は、山寺駅に戻ってきた。
このあたりになると、人がまた増えるので、もう余計な声は発してはならない。
時刻は午後2時20分ごろ。
小さな駅の改札上に、時刻表が掲示されている。
さあ、電車は何時に来るだろうか?
時刻表を確認した私は、口をポカンと開けてしまった。
決意通り、あっと言わなかっただけよく耐えたと思う。
14時の電車。11分発。
さっき行ってしまったばかりだ。
次の電車。15時14分発。
まさかの1時間に1本しかない、という展開である。
やってしまった。
これは、完全に私がうかつであった。
見れば、時間帯関係なく、どれも1時間に1本である。
行きの在来線の発車時刻のタイミングがあまりによかったおかげで、電車の本数が少ないかもしれない、という可能性を全く考えなかった。
いや、そもそも行く前に、帰りの電車の時間くらい見ておけばよかったのだ。
行き当たりばったりで生きる人間の典型的なミスである。
まあ、仕方ない。
ここでどんなに嘆いても、電車が「わかった、ちょっと頑張ってみる」と言って30分早く来てくれるわけではないのだ。
駅前にベンチがある。私はそこにちょこん、と腰かけた。
もう少し散策するには、足が「それはやめろ」と訴えている。
こういうとき、車だったら好きなタイミングで帰れるのになあ……。
向こうに駐車場が見える。もちろん満車。
にも関わらず、入ろうとしている車がいる。
うーん……やはり車じゃ厳しかったかも。
結局、どう転ぶかは選択してみないとわからない。
少なくともこれはこれで、と思うしかないのだ。
気持ちはサッサと切り替えよう。
風が気持ちいい。天気がいい。向こうの山脈の尾根にはまだ雪が残っている。
ぼんやり景色を眺めながら、この後どうするか考える。
時間があれば、仙台周辺も少し観光しようかと思っていたが、それは難しそうだ。
そうだ、駅でお土産を買ってしまおう。
今日のうちに買って、ホテルで荷物に詰めてしまえば、明日が楽だ。
あとはずんだシェイクを飲もう。
楽しい1日ではあるが、体が疲れているのも感じている。
あまり無理はせず、ホテルに帰ってゆっくり休もう。明日は松島に行くのだから。
ふと、時間を見る。
ようやく、2時半を過ぎたあたりか。
さすがに暇を持て余した私は――エブリスタを見ることにした。
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