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ホテルに到着したのは、午後6時前。
国道沿いにあるビジネスホテル。歩いて行けるところにコンビニがないとのことなので、先に立ち寄って必要なものを買っておいた。
何を買ったか?
部屋で飲むためのビール、揚げせん、それから水にチョコレート類のお菓子。
どれもこれも必須アイテムだ。
本来であれば、ここにアイスがつけば100点満点なのだが、冷凍庫があるとも思えないので、そこはいったん流しておく。
レストランで飲むつもりなので、それにしては少し買い過ぎたような気もしたが、まあ足りないよりはいい。
余ったら持って帰ればいいのだ。どのみち飲むことに変わりはない。
私は、意気揚々とチェックインを受けに、フロントに向かった。
若い女性の従業員の方が迎えてくれる。
「予約していた熊野と申します」
宿泊者カードの記入を頼まれ、せっせと書く。
ふと従業員の方が、350mlの一番搾りを取りだしたのを横目にとらえた。
……缶ビール?
私が予約していたプランは、レストランでの生ビールがタダになる内容ではなかっただろうか。
それとも、さらなるプレゼントだというのだろうか?
従業員は宿泊に関する説明を一通り終えると、最後にこう言った。
「本日ご予約いただいたプランが、レストランでの生ビールのサービスという内容になっておりましたが、本日レストランが定休日とさせていただいておりまして、」
え? 定休日?
レストランはフロントのすぐ横にある。従業員が指し示した先に、つられて視線を向けると、確かに『本日定休日』と掲示されていた。
「あー……へえ……」
これは思わず声が漏れた。
GW真っただ中に定休日とは。いや、でも定休、というのだからGWも何も関係ないか。
「申し訳ございませんが、こちらのあの、缶ビールのサービスで、もって」
私がよほどポカン、と間抜けな顔をしていたのだろう、従業員のしゃべりも何となくコケる。
「変えさせていただきます」
とのことである。
「は、はあ……」
とりあえず、一番搾りを受け取った。
まあ、いい。一番搾りは好きだ。これはありがたくもらっておこう。
「定休日かあ……」
私はカードキーを受け取り、エレベーターを待ちながら考えた。
そんなのどこにも書いてなかった気がする。
いや、公式HPでは告知していたのだろうか? 私が見落としていた可能性は十分ある。むしろ、その可能性しかない。
仕方ない。夜ご飯用意してないんです、と訴えたところで、今日休んでいる従業員を出勤させるわけにもいかない。
さて、どうしたものか。
早急に今後の予定を考え直さねばならない。
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