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部屋に置いてきてしまった。
手にもポケットにもないのだから、そうしかありえない。
一応、ご説明しておくとこのホテルの部屋の鍵はオートロック式で、外から開ける際にはカードキーをかざして開ける。
ビジネスホテルでは割とスタンダードな施錠方式となっている。
つまり、カードキーを持たぬまま外に出て、扉がしまったら最後、部屋に入れないのだ。
やってしまった。
カードキーを持たぬまま外に出てしまったのは、実は1度ではない。
以前、別のところへ宿泊した際もやってしまった。
だから、これからは気をつけようと思っていたのに。
1にカードキー、2にカードキー、3、4、飛ばして5にカードキーではなかったのか。
1度、上手くいくとすぐ忘れてしまう。
こうなったら仕方ない。恥を忍んでフロントに申し出るしかすべはない。
私は、チラッと時間を確認した。
さて。
エレベーターで1階に降りていく。
フロントまで行き――その前を通り過ぎる。私は朝食バイキングが開くのを待つ列に並んだ。
まずは朝ごはんを食べる。話はそれからだ。
朝ごはんを食べ終えた私は、フロントにカードキーを部屋に置きっぱなしにした旨を申し出た。
スペアキーを借りて、部屋に入る。
カードキーは何食わぬ顔で、スイッチに刺さったままだった。
「やはりここだったか……」
いや、ここにいなかった場合のほうが、もっと深刻な状況となってしまうのだが。
さあ、支度をしなければ。
私は、バタバタ部屋を駆け回りながら、準備を始めた。
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