’19.04.29-30 山寺・松島に行く→2日目

14/22
前へ
/153ページ
次へ
 外に出た。  雨が降っている。誰もいない。  面白いくらいに、雨の音と、鳥の鳴き声しか聞こえない。  私が何も言いさえしなければ、そこは人の立ち入らぬ空間であった。  先に林道が気になって、少し上ってみた。  しかし、思った以上に延々と続くので、あきらめて途中で下りた。  もっと先まで行けるかな、なんて安易な気持ちで車で上がらなくてよかった。  それこそ『バックで下ろうぜ』状態になってしまう。  なるほど、地図に表示される道というのは、アスファルトで舗装された道のことなのだ。  今までそんなこと考えもしなかった。ゆえに、知らなかった。  ということはつまり、私が地図上で見て認識しているよりずっと、この日本中には山道や小道、裏道があふれているということになる。  やはり、自分の足で来てみないとわからないことは、たくさんあるものだ。  さて、林道をあきらめた私は、階段の方に行ってみることにした。  入り口に、小さな看板が据えてある。 ――松島・四大観 麗観 富山観音。  ここか。  ということはつまりだ。  この謎のスペースこそ、駐車場だったということになる。  わ、わかりづらい……。  駐車場というからには、せめて白線の1つか、駐車スペースと案内した看板でもあるかと思ったのだが。  しかし、長そうな階段だ。  すでに靴には水がしみ、昨日の山寺に登った際の筋肉痛が、すぐ後ろに迫っている気配を感じたが、ここまで来て上に行かないのはもったいない。 「行くか!」  どうせ、誰もいないのだ。  私は声に出して、自身を鼓舞し、階段を踏みしめて行った。  ~*~*~ ↓階段を少し上って、振り返って撮った写真。  スペースにぽつんと取り残されているのが、私が乗ってきた車。 a83821c4-6b3a-46ad-bed8-6c0db33a42c8  ~*~*~  息が切れる。日ごろの運動不足のせいだ。  足が冷たい。階段は水はけが悪かった。  まだ続くのかと息をつきながら登ること、10分か15分ほどだろうか。  ようやく頂上についた。  先ほどの駐車場よりは開けた、木々に囲まれた場所に、小さな門と、観音堂と鐘があった。  先客はいない。  雨の音が、さわさわ音を立てている。  しとしと、でもなくザーザーでもなく、さわさわだった。  あまり雨が強くない、というのもある。  おそらく私は今、雲の中にいるのだろうなと、ぼんやり思った。  時折、葉や枝にたまったしずくが、パタタッと不規則なリズムで落下する。  あとは、ホーホケキョの声くらいか。  なるほど、人のいない山の中の雨は、こんな音がするのか。  木や草に落ちる雨の音なのだ。  見れば、観音がここに安置されたのはおよそ1200年前だというから驚きである。  みんな、いったいどうやってここまで登ってくるのだろうか。  一通り、ぐるっと眺めた私は、一応、展望台にも行ってみることにした。  天気が悪いのはわかっている。わかっているが……。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加