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車に戻る。
なかなか足の筋肉痛が来ている。靴もびしょびしょだ。
さて、次は日帰り温泉に行こう。
時間はまだ余裕がある。
もう、移動して時間までゆっくりするのがよさそうだ。
歩いたおかげで体は寒くないが、足先は濡れて気持ち悪いし、ふくらはぎはビシビシ痛み始めている。
去年行った、日帰り温泉のホテルは確か……確か……。
名前をど忘れしてしまった。
道と場所は覚えている。
私は、『松島・日帰り温泉』で検索し、出てきた温泉施設と場所を照らし合わせながら、ようやくホテルの名前を確認した。
ああ、そうだ。ここだ、ここだ。
『一の坊』というホテルである。
とても綺麗な宿で、おそらく私が泊まるには、少しお高そうなところだ。
頑張って、泊まってみてもいいが、来月の家賃が払えなくなる恐れがある。
その点、日帰りなら1000円くらいで、広くて眺めのよい、気持ちいい温泉に浸かれるのだ。
一応、ホテルの公式HPにも飛んで、写真や何やら確認してみる。
そうだそうだ、ここだ。ああ、日帰り温泉プランもある。
うんうん、……ん?
『日帰り温泉は、火曜日は定休日となっております』。
今日は何曜日だ。火曜日だ……。
待ってほしい。そんなことがあるのだろうか。
月曜は、行こうとしていたレストランが定休日で、火曜は日帰り温泉が定休日だと。
平日は、定休日という落とし穴があったのか……。
GWだから特別に、ということはなかろうか。
ないだろうな。
うーん、と私はうなった。
しかし、温泉は入りたい。
となれば、別のところを探すしかないだろう。
ああ、そうだ。
一の坊の同じ敷地内に、もう1軒、ホテルがあったような気がする。
あそこはどうだろう。
ささっとネットで探してみる。
あったあった、『ホテル壮観』がある。
ここに変更しよう。定休日も特に書いていない。
きっと、一の坊が休みの時には、こちらが営業して、こちらが休みの時は一の坊で営業して……とかいうアレだろう。
さあ、温泉だ。
私は車を発進させた。
あんなに長いと感じていた階段も、びくびくしていた山道は、帰りはえらくあっさりと感じられた。
童謡『とおりゃんせ』に『行きはよいよい、帰りは怖い』という節があるが、その逆だ。
多分、行きはゴールがどこかも、どうなっているのかもわからなかったがゆえの不安があったのだと思う。
1回通ってしまえば、何のことはない。
結局、対向車にも会わず、通りに出ることができた。
つまり、私がこの山道を上がってから戻るまでの間、私以外に富山を訪れた人はいなかったということになる。
まあ、今日は天気が悪いので来ないのは当然だろう。
しかし、晴天の日はどうなのだろう。みんな、来るのだろうか。
そうしたら、あの山道を走るのも大変なのかな。
相変わらず空いている道を飛ばしながら、私はぼんやりそんなことを考えていた。
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