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お目当てのホテルは、渋滞ゾーンの手前に位置する。
なので、あっという間についてしまった。
駐車場も空いている。
手近なところに停め、支度をし車から出た。
時間にはかなり余裕がある。
ゆっくり温泉に浸かって、コーヒー牛乳でも飲もう。
外は軽い小雨だ。
しかし、エントランスはすぐそこなので、傘はいらないだろう。
ガラス張りの自動ドアに近づいていく。
初めてのところだ。どんな雰囲気だろうか。
私は少し、中の様子を伺いながら、ゆっくり進み――。
足を止めた。
自動ドアの向こう、壁に何か貼り紙がしてあるのが見える。
嘘だと言ってくれ。
『日帰り温泉をご利用のお客様、本日は定休日となっております』。
また定休日!
一の坊が休みの時には、こちらが営業して、こちらが休みの時は一の坊で営業して、とかいうアレではなかった。
むしろ、みんな仲良くお休みのパターンであった。
ここまで来ると、何だかおかしくて笑えてくる。
月曜、火曜は定休日の確立が高いのだろうか?
これはこれで、ひとつ勉強になった。
というより、やはり最低の事前調査はしておかなければいけないということだ。
「……やれやれ」
しかし、ここでぼう然としていても、営業していないものはしていないし、仕方ない。
とりあえず、小雨に当たっていては風邪を引いてしまうので、いったん車に戻った。
改めて、他に行けるところがないか調べてみる。
本日営業している、日帰り温泉――。
約1時間半後。
「……ぷはあ」
私は、座敷で瓶のコーヒー牛乳を飲んでいた。
やはり、温泉はいいものだ。
ホテルではないが、日帰り温泉施設を見つけた。定休日は木曜日であった。
広くもなく、こぢんまりとしたスーパー銭湯、と言った方が近いか。
駐車場が、私が入ったときに空きがラスト1台だったのはラッキーであった。
先ほどまで冷えていた私の手足は温まり、顔はツルツルしている。
すぐに、その上に下地を塗らなければならないのが、悔しいくらいだ。
終わりよければ全てよし。
あとは無事に帰るだけだ。
もう旅行が終わってしまう寂しさはあれど、私は満足であった。
また来ればいいのだ。何度だって来よう。
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