この親にしてこの子あり→’19.06.22

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 さあ、次はどうしようかと考えて、私は母を駅ビル内の無印良品に連れて行った。  ここに、ミニリュックサックという、ぜひ母に買ってほしい商品があったのを思い出したのだ。  前述のとおり、母は荷物を減らすことに命をかけている。  最低限必要な、財布、スマホ、老眼鏡(これが最も重要。ないと、上2点が全く機能しなくなる)を入れるだけのリュックがほしいと常々言っていた。  しかも、リュック自体が軽いというのが前提である。  意外と、これがないのだ。  コンパクトなかばんはあるのだが、背負うのではなく、斜めがけにするのが多い。  それではだめなのだ。両肩均等に負荷がかかるようにしなくてはならない。  母に商品を見せると、やはりドストライクだったようだ。 「そうそう、これこれ! こういうのがほしかった!」  喜んで、手にしたリュックをバシバシ叩いている。落ち着け。  とりあえず、これは私からのプレゼント、ということにした。  それから、通常サイズのリュックも買った。  これは、私と同じ6月生まれの弟にあげるためだ。  誕生日当日、LINEを送った際に、何が欲しいか考えておけと言ったのに、ついぞ返事は来なかった。  仕方ない、そういう男なのだ。  これといってこだわりもなく、物欲もない。自分から行動はせず、誰かの後ろをついてくるタイプである。  しかし、あげれば素直に喜んでくれるし(もちろん、いらないものは喜ばないだろうが)、誘えばおとなしくついて来てくれる。  この性格は、母似である。私とは逆だ。  末っ子同士と言うのも、関係あるのだろうか。  弟は2019年現在、学生である。  一般的な学生の年齢よりはずっと上だが、本人の意志あって、学生をやっている。  毎日リュックにずっしり重い教材を入れて通っているので、リュックの消耗が激しいらしい。だんだん破れてしまうのだそうだ。  となればまあ、リュックはあげても困らないだろう。  使ってもらえれば、どうせ1年かそこらで破れるのだ。そんなに高価なものでなくていい。  私は母のリュックと弟のリュック、それからついでに自身のタンクトップも買うことにした。 「いや、タンクトップも買うんかい、」 という母のツッコミを背に受けて、レジに向かったのだった。
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