母、テーパードにやられる

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 結局、全ての服が決まったのは、夜9時頃であった。  私も母も、そうそう頻繁に服を買わない。  せいぜい1年に1回か2回くらいだ。  こういうときくらい、思いっきり買おうではないかと、2人で心ゆくまで買った。  それから、弟の分も少しお買い上げ。  母が6割、私が3割、弟が1割くらいか。  ……お会計、83482円。  関係各位、繰り返す。83482円。  さすがにそんな額の現金は持っていないので、私のカードを切った。 「お金は今度渡すね」 と母が言った。 「40000でいいよ、半分」 「いいよ、私全部出すよ。ほとんど買ったの私だし。ほら、父ちゃんからもらったお金もあるし」 「うーん……いいの?」 「いいよいいよ、今日は菜名ちゃんのおかげで、いい買い物できたし」  それでは、お互いのお祝いの意味がないのではとも思ったが、ここで言い争いをしても仕方ないし、ありがたく好意に甘えることにした。  まあ、親だからいいか、という思いもある。  逆に言えば、これだけ甘えられるのなんて、家族や親くらいしかいないものだ。
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