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母が吸っていたカフェオレのストローがずずっとなった。
「あ、なくなった」
あんなに飲めないと言っていた500ml、完飲である。
「100mlあたりのカロリー見てみたら」
「嫌だ、見ない」
母は現実から目をそらしたまま、紙パックを処分した。
「結局、飲んだじゃん」
と私が言った。
「うん、何かね、液体だとすんなり飲めるんだよね」
母は、子供のころはそれはそれは大食い少女だった。
学校から帰ってきて、おやつにおでんを食べ、夜ご飯を完食し、夜食に焼きおにぎりを食べる小学2年生とのこと。
大人になってから、ストレスで胃をやってからは、気持ちのままに食べられなくなったのだそう。
食べたい欲はあるのに、胃腸がそれに応えてくれないというわけである。
実際は食べないけれど、思考は完全な食いしん坊だ。食いしん坊万歳だ。
「アイスもさ、あんなの水分だと思ってたくさん食べるじゃん?」
母が言うたくさんとは、パピコ8本ほどである。
「そしたらさ……体重増えてんだよね」
当たり前だ。
「でもさ、食べないわけにいかないから」
それはわかる。
「我慢したら、それはそれで今度はストレス太りするから」
なるほど。
「どっちにしろ太るんなら、食べて太った方がいいじゃん」
「もういっそのことね」
「そうそう」
――私が心ゆくまで酒を楽しみ、会話を楽しみ(途中、母が一瞬寝落ちした)、眠りについたのは、午前3時半ごろであった。
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