母、コロッケパンを語る

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 昨日コンビニで買っておいたパンを開けて、朝ごはんにする。  私はコロッケパン、母はチョコクレープかなんかだった。  母が、私のコロッケパンをしみじみと見る。 「やっぱりコロッケパンはいいよね。やきそばパンとコロッケパンは間違いない」  いきなり何を言い出すのかと思ったが、私もコロッケパンは間違いないと思うので、うむ、と同意した。 「昔はよく食べたなあ、コロッケパン」  母のコロッケパン談は続く。 「昔のってさ、コロッケがちっちゃかったんだよ。細長くてコッペパンの半分しかなくて」  私が今食べているそれは、コッペパンとぴったりサイズのあった、大変ありがたいコロッケである。 「だからさ、自分でコロッケ買ってきて作るんだよ。肉屋さんのおいしいコロッケね。食パンに乗せてね、ソースはだばだばってかけるの」  ソースはだばだばが、ポイントらしい。 「そうするとね、大きいコロッケパンが出来るの」  これも小学生のときの話だというから、母の食好きには頭が上がらない。  コロッケパンのコロッケが小さいからって、それぞれ買って自分で作ろうと思うだろうか。  すごいな、と思いながら、私は大きなコロッケパンに向かって口を開け―。  ふと手を止めて、1口サイズに手でちぎった。 「ん」  あげたら、ぱくっと食べた。餌づけか。 「うんうん……やっぱりうまい」  母は満足そうにうなずいている。 「やっぱりコロッケパンは間違いないね」  お返しに、母のチョコクレープも少しもらった。  やはり、美味しい。間違いない。間違いないけれど――。 「うん……いや、甘っ」  母がケラケラ笑った。  ソースたっぷりのコロッケパンの後では、チョコクレープはさすがに甘すぎたのだった。
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