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紛失事件
日曜の夕方である。
道、混んでるかなあなどと考えながら、私は車を走らせていた。
道中、1/3くらいまで来たところ、国道に入る手前くらいだっただろうか。
赤信号で、止まる。
「あ、そうだ」
弟にLINEを送らねば。
いそいそとスマホを探す。
助手席にはない。
スマホを探す。
リュックを開けてみるが、姿は見えない。
スマホを……。
スマ……。
「……」
そうこうしているうちに、信号が青になった。
とりあえず、中断して運転に戻る。
いや、待ってくれ。
私のスマートなフォンがないだと?
誰か鳴らしてみてくれ。
あ、誰もいなかった。
いやいや、これは見落としているパターンだ。
リュックの奥に潜んでいるかもしれない。はたまた、席の下に落ちているかもしれない。
私は車を停めるべく、コンビニに寄った。
リュックの中も探した。ズボンのポケットも全て探した。席の下も探した。
しかし、出てこない。
おかしい。星乃珈琲店を出たときは、確かに持っていた。助手席に置いたはずではないか。
その後、私は車から出ていない。母を下ろした時も、私はずっと運転席にいた。助手席に置いてあった買い物の袋だって、母が向こうからドアを開けて持って行ったのだ。
買い物の袋……?
母が主婦歴ウン十年なら、私はドジ歴ウン十年のキャリアを誇る超一流ベテランである。もはやプロとして食べていけると言っても過言ではない。
ある1つの可能性が浮かんできた。
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