キルフェボンのケーキ

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 1ピース、6、700円から。季節ものとなるともっと高くなる。 「1ホールだと、1万以上するものもあるんだって」 「ひえええ」  思わず、私は悲鳴を上げた。 「誰が買っていくんだろうって思ってたんだけどさ、芸能人が差し入れなんかに持って行くらしいよ」 「ひょー」  銀座で1万円以上のケーキを差し入れ。住む世界が違う。 「ちゃんと買う人がいるんだね」 「なるほどねって思ったよ」  世の中、うまく出来ているものだ。 「でも、その分美味しいんだよね」 とN子は語る。 「いつも友達と行くと、2つは食べちゃうな」  ふむ。お値段はするだろうが、1度は食べてみたい気もする。 「ここから銀座って近い?」  何度も東京に来ているにも関わらず、まだ何となく土地勘のつかめていないN子である。 「銀座なら……うん、そんな遠くないよ」  実際の電車の時間を調べてみる。 「うん、1時間かからないね。――駅からは近いの?」 「確か、歩いてすぐだった気がする」  俄然、ケーキに気持ちが傾いて来た。 「ケーキ食べたくなってきたなあ。明日行ってみる?」  どうせ、1人じゃ行かないのだ。友人といる今がいい機会だろう。 「お昼ケーキになるけどいい?」 「いいよいいよ、その何とかかんとかってところ、行ってみようよ」 「名前覚える気なさすぎでしょ」 「ごめん」  人気店ということで、早めに行くことにした。  開店11:00より前、10:30くらいに駅に着くように逆算して、アラームを設定する。  2人とも、あの頃ほど若くもない。昨日まで仕事だったのだ。かなり眠い。  ケーキを楽しみにして、その夜はおとなしく眠りについたのだった。
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