キルフェボンのケーキ

4/7

32人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
 無事に電車を乗り継ぎ、キルフェボンに到着したのは、10:30過ぎ。  すでに、列が出来ていた。 「おお……もう並んでいるよ」 「早めに来て正解だったね」  この日の東京は本当に寒かった。  ビル風という名の北風も吹き付けてくる。 「首が寒い……」 とN子がぼやいた。  見ればマフラーはしていないし、コートも首の防備は緩い。さらに、長髪をバッチリ後ろでまとめているのであった。  耳から首まで丸出しである。 「そりゃ寒いでしょうね」  一方の私は、マスクと耳まですっぽり覆ったボブヘアーの上からマフラーをぐるぐる巻きにしている状態であり、ほぼ目しか出していない。それでも寒いのだ。 「うっかり髪結んじゃったからさ」 「本当ね」 「荷物になると思ってマフラー持ってこなかったんだよ」 「やっちまったね」 「やっちまった」  途中、N子のスマホでパズルゲームを始めた。  彼女がプレイするのを、ぼけっと見る。  そうこうしているうちに、開店した。 「お、開いたよ」  ~*~*~  中は、アンティーク調でとてもおしゃれだ。  うっかり、いつも通りのジーンズとスニーカーで来てしまった自分がとんでもなく場違いな気もしてくる。  しかし、思っていたよりお客さんもおしゃれな方々ばかり……というわけでもない。  とにかくケーキを食べよう。  うん、私はケーキを食べに来たのだ。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加