キルフェボンのケーキ

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 まずは、コーヒーに砂糖とミルクをとかす。  それから、カップを持ち上げて、鼻から湯気を吸いこんでみる。 「ん!」  絶対的な確信を得た。  間違いない。これは美味しいコーヒーだ。  口にふくんで答え合わせをしてみたら、100点満点である。 「美味しい!」  いうなれば、リゾートホテルのコーヒーの味のようだ。  濃厚なブレンドである。  続いては、フルーツタルトだ。  ビニールを取り、フォークで食べてみる。 「んん!」  先ほどから、もうちょっといいリアクションでも取れないかと思うが、庶民たる私にはこれが精いっぱいだ。  タルトはサクサク、カスタードが濃厚で甘い。  フルーツがいちいち美味しい。  個人的におおっと思ったのは、柿が入っていたことだった。  さすが奇跡……違った、季節のフルーツタルト。美味しい。  途中、N子の黄金芋と紫芋のタルトと、一口ずつ交換した。  おお、こちらも美味しいではないか。 「これは、すごいね」  私はN子に感想を述べた。 「美味しいや」 「よかったよかった」  N子もほっとした表情である。 「私、色んな人にここおすすめしているんだ」 「うん、私も連れて来たいと思うもん」  誰か連れてくるより前に、こんなエッセイで紹介してしまうことになるわけだが。  ~*~*~  ふと、N子が飲んでいる紅茶に目を止めた。 「それ、何?」 「ルイボスティー」  恥ずかしながら私、ルイボスティーなる存在をこの時初めて知った。  ゆえに、N子が何て言ったのかさっぱりわからなかった。 「え、う、ウィヴォ、ヴォ、ウェ、エ?」 「ルイボス」  全然合っていない。 「ルイボスって言うの?」 「そう」  N子は笑いをこらえながら言った。 「あ、そうなの……」 「一瞬、くまちゃん宇宙人になったかと思った」 「ははは」  否定もできず、笑うしかなかった。  これじゃおあいこだ。  N子の『奇跡のフルーツタルト』を笑っている場合ではなくなったのである。
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