第十二章 それぞれの想い 

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ステラ ヴィーニー老師の下に滞在して1週間。私もプリオールもメキメキと魔法力をつけた。 閃光呪文も無事唱えられるようになり、近い距離ならリーディが使っていた移動呪文もできるようになった。 プリオールの魔法力も強力になり尚且つ安定もしてきたのだ。 その代り毎日修行が終わるころには本当に気力がなく、夕食を作り、禊を終えると爆睡状態だった。しかし寝床に入る前に私には必ず確認することがあった。リーディに託されたナナイロマキガイ。  彼から連絡が入った場合だと点滅するように輝くという。その輝きを幾らくたびれていても私は確認しない時はなかった。 何度か私から連絡しようかと思ったけど緊急用だという前提なので迂闊にできなかった。 そう、あいつから連絡があった場合は無事の知らせのはず…。 「一体どうしたっていうの…。」 私は何も変化のないマキガイを握りしめて一人呟いた。洞窟のある島まで2日掛かることも入れても、もう戻ってきてもいい頃合いだ。でも一度連絡取ってしまうと魔法が解けて、ただの巻貝になってしまうので心配であっても私はこれを使えなかった。そして決まって溜め息をついて疲れから、すぐに眠りに落ちていたのだ。 しかし、その日は老師がこう言った。 「教えようとした魔法の魔導書がうちには無いようじゃな…そうじゃステラ?覚えたての移動呪文の練習もかねて一度スフィーニに戻り魔導書を持ってきてくれぬかのう?」 「スフィーニに?」 「おそらく城にはあるはずじゃ」 ヴィーニー老師は頷くと続けてこう言った。 「ローブ姿じゃそなたは動きにくそうだから、前の装備で出かけるが良いぞ?」 と。             出発は明日と言うことで、私は寝る前に出かける準備をしながら考える。 ―でも、スフィーニ城に魔導書があるって言っても…どこに?? 老師に訊いても、公認魔導師の誰かが知っているだろうとしか言わないし。  まずあのお城の中広いのに、どういう風に探せばいいのかしら…。誰かに訊けばゾリアさんとかに引き合わせてもらえるかもだけど―― 壁にはマジック・スピアを立て掛けた。これで準備完了。  そしてもう一度道具袋のチェックをして、ついマキガイを手に取る…。  ――そうだ。リーディなら魔導書のありかを知っているかも―― メイ 多分、洞窟の中で4日間は過ごしたと思う。結構深くまで進んだ。  あたし達は無理をしない、時間が掛かっても、こまめに休むことを心掛けた。  そうじゃないと私の体力も、リーちゃんの気力もすぐに尽きるからだ。コウが休憩時に 滋養薬をふるまったり、あたしには足のマッサージをしてくれたりした。休んでいる時、 リーちゃんは決まって、綺麗な色のマキガイを道具袋から出して、何かを確認するように手に取り、すぐに仕舞う。そして今、彼は珍しく仕舞わずマキガイを見つめている。 マキガイはうっすらと光帯びている気がした。 「リーちゃん、どうしたの?」 「ああ、悪りぃ、ちょっとこの場を離れる」 リーちゃんは立ち上がって結界の端っこの方へ行く。そして手に持ったマキガイに耳を当てて何やら話している様だ。なんだろうと耳を傍たてる。コウも気が付いたようで一緒に聞き耳たてちゃった。 「…そっか…こっちはまだ洞窟の中…ああ?大丈夫だと思う…。書物の在り処?それは、 城の中に魔法研究所がある。そこの書庫にあるだろう…それは…」 誰かと喋ってる? あたしはそっと近寄ってみる。 「誰と喋ってんの?」 「わっ」 不意打ちだったせいか、リーちゃんは珍しく驚いてあたしの方を向いた。 「急になんだよ」 怪訝そうに眉を顰めこう答えられた瞬間、マキガイから声がした。 「あれ?メイ?メイもいるの?」 そうまぎれもなくその声は、ステラだった。 …あれから私はリーちゃんからマキガイをふんだくり、ステラと話した。 相変わらず元気そうで、こっちの様子も聞かれたけど本当は疲労困憊であることは言わず、ちょっと疲れたわー位に留めておいた。するとステラからこんな答えが返ってきたよ。 「本当なの?リーディも平気の一点張りでさ、もう5日以上経つよ?」 リーちゃんもあたしと同じように、ステラを心配させないために平気な振りしていたんだな。考えることは、一緒だわ。そう思いながら、同じように平気だと答えて私は続けて訊いた。 「で、あんたはどうなの?」 訊くと、修行は大変だけど充実している、 で、今回連絡を入れたのは魔導書を取りにスフィーニにいかなければならなくて、 その在り処をリーちゃんに訊いていたのだと。彼女は答えた。 ――城に一人で?? あたしは胸騒ぎがしたが、もう時間切れになりそうな感じがしたのでマキガイをリーちゃんに渡す。 「いいか、城の1階の渡り廊下の東側の塔に研究所がある。そこに行けば本はあるからな、あーわかったわかった。おまえも頑張れよ。」 会話を終わらせるとマキガイの色は輝きがなくなり、ただの貝になった。 反面リーちゃんは少し安堵の表情を浮かべていたのを見逃さなかったわよ。 ははーん、ステラからの連絡気にしていたんだね。案の定、あたしがニヤニヤして リーちゃんを見ていると、彼が憮然としてあたしを見返した。 「…なんだよ」 「べっつにーぃ。」 あたしの少しお茶らけた反応に、一瞬訝しげに眉を顰めるが、すぐにあきらめ口調でこう言った。 「まぁいいや。ちょっと休んだら先急ぐぞ」 「はぁい~」 うっふっふ。相変わらず淡々としているこった。
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