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俺の妻は癒しに長けている。☆
【ダーク視点】
ちゃぽ、ん。
一時気まずかった夕食も、リーシャやアレックのお陰で気持ちを切り替えて過ごす事が出来たし、子供たちもご機嫌になっていた。
ルーシーが、
「今夜は奥様とお二人でお休み下さいませ。アレックと私で坊っちゃま達と休みますので」
と耳打ちしてくれたので、なんとなく子供たちとも顔を合わせづらかった俺は有り難くお願いした。
ベッドルームが3つもあるせいか広めのバスルームも2つあり、ルーシーやアレック、子供たちはもう片方に入った。
俺もリーシャが入るから早く出ねばと思うのだが、つい湯船でウダウダとしてしまう。
そうなのだ。
俺はリーシャの言う前世でどうあろうとも、今生きているこの世界ではかなりの不細工である。それはずっと自覚していた筈なのに。
(息子に言われる必要もない非難が浴びせられた………)
このことがずっと心の中でわだかまりとなっていた。
リーシャが、本人が『まあ使えるんなら武器にする』とどうでもいいように言い切る女神のような美貌で、低姿勢で愛想よくすることで丸く収めはしたが、妻にワザワザ苦労をかける前に俺が収めなくてはならない事だった。
自分の情けなさに悔しくてならない。
俺だけならどうと言う事はない。
今まで通り軽く流して耐えれば良いだけだ。
でも、家族は。リーシャや子供たちだけは、俺が不細工である事での不利益を被らせたくない。
明日の海も、俺は少し離れた所にいた方が………。だが何かあったときに近くにいないと………。
「ねえダーク、まだお風呂?」
行ったり来たりする煩悶でまた時間を食ってしまったらしい。リーシャの声が聞こえ、俺は慌てて風呂から上がる。
「済まない!すぐ出る」
「ああ、いいのよ入ってて。私も入るから」
「!?」
………今何と言った?
結婚してから一度も一緒に入った事などないぞ。何度かそれとなく頼んでみた事はあったが、恥ずかしいからと断られ続けていたのに。
心が動揺してる間にバスルームの扉が開き、全裸のリーシャが入ってきた。
余りに眩しく扇情的で、著しく股間がまずい事になったため、また湯船に沈む。
「ど、どうしたいきなり?」
「んー?気が向いたの。………イヤ?」
「いやっ、勿論大歓迎だが」
リーシャは身体と頭を手早く洗うと、
「お邪魔しまーす」
と湯船に一緒に浸かった。
色つきの湯で良かった。秒で股間をおっ勃たせた馬鹿な夫の姿を見られずに済んだとホッとした。
「………やっぱりまだ気にしてるのね?
あんなロクデナシ達の言った事なんか忘れなさいよ。ダークが落ち込んでやる価値もないわよ」
リーシャにはやはりお見通しだった。
「………だが、そうは言っても、な」
俺はつい溜め息がこぼれた。
ダメだ。ついリーシャには甘えてしまう。
リーシャは、暫く俺を眺めた後、俺の手を取り、
「ダークが私を抱き締める手が好き」
と掌にキスをされた。
「えっ、おいっ」
「私の話をちゃんと聞いてくれる耳が好き」
耳朶にキスをされる。
「ダークの曇りのない瞳が好き」
瞼にキスをされる。
ダークの声が好き、鼻が好き、頬が好き、とあちこちにキスをしまくられ、最後に、
「どこもかしこも好きだけど、一番好きなのは貴方の汚れのない心よ」
と胸元にキスを落とした。
「貴方は私の太陽だと何度言えば分かるの?
まあ百万回でも言うけれど、私が愛してるのはダークだけ。幸せにしたいのもダークだけ。………あ、ごめんね、子供たちとかルーシー達は別ね。家族愛はノーカウントよ。
………ダークの心を独り占めしたいのよ。些細な事で私の太陽を翳らせたくないわ」
優しく俺の髪を鋤いてくるリーシャを俺は抱き締めた。
「明日も………一緒にいていいか?」
「イヤよ。一生側に居てくれなきゃ」
ああ、俺の妻は本当にいつもいつも俺の欲しい言葉をくれる。
「ああ、いけない。独り占めしたかったのは貴方の心だけじゃなかったわ」
リーシャがクスッと笑い掛けた。
「貴方の身体も独り占めしたかったわ」
「………おう。奇遇だな。俺もだ」
俺はリーシャを抱き上げると、キスをした。
「ベッドで証明しよう」
俺の愛情の深さを。
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