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数日前、私は大学の帰りに、公園の中を通り近道をしようとしていた。
しかし、急に雨が降ってきて逃げるように、公園の屋根のあるスペースに逃げ込んだ。
「すぐやむといいけどな」
雨空を見てためいきをついた。雨でぬれたところがひんやりと冷たく、寒気がしてきた。とりあえず、濡れたところを拭こうとバックを開けた。
今日に限ってタオルを忘れてしまい、再びためいきをついてしまった。
「お姉さん、どうしたの?」
後ろから声をかけられ、びっくりして後ろを振り返る。今まで誰もいなかったはずなのに、いつの間にか少年がペンチに座って、こちらを見ていた。
「お母さんがね、ためいきをつくと幸せが逃げていくって言っていたから、やめたほうがいいのよ」
にっこり笑った少年は、まるでフランス人形のような顔だちで金髪と青い瞳をしていた。きている黄色いカッパに違和感を感じながらも、綺麗な子だなと純粋に思った。
「はい。女の子は体を冷やしちゃいけないんでしょ?」
少年はリュックからタオルを取り出して、私に渡した。
「ありがとう。…いろんなことを知っているんだね」
「そうかな?普通だよ」
彼は自分の座っていたベンチにもどった。よく見ると、ベンチには大きなバスケットがおいてあった。彼はバスケットから大きなお弁当箱や水筒を取り出し、テーブルに並べた。
「何をしているの?」
興味がわいて聞いてみると、少年は満面の笑みを浮かべた。
「ピクニック!」
「…ピクニック?」
「そう!お姉さんは知っている?ピクニックってね、天気のいい日に、外の景色を見ながらゴウカな食事をするの」
「天気のいい日?」
「うん!…僕、雨の日が好きだから」
「…そうなんだね」
目を輝かせて話す少年を見て、なんだかほほえましくなってしまい、思わず少年の頭をなでた。少年は一瞬目を丸くしたが、気持ちよさそうに撫でられていた。
「お姉さんも一緒にピクニックする?」
「…じゃあ、お邪魔させていただこうかな」
当分、雨はやまないだろうと考え、少年のいうピクニックにお邪魔させてもらうことにした。
「どうぞ」
少年からサンドウィッチを手渡された。
「おいしい!」
「そうでしょ?お母さんが作ってくれるサンドウィッチはすごくおいしいんだ」
少年はバスケットからペットボトルのお茶を取り出してくれた。
「もらっていいの?」
「うん!」
お茶を飲みながら、少年の近くにある水筒が目に入った。
「この水筒は僕専用の飲み物だから、お姉さんにあげない」
水筒が見ていたのに気が付かれたのか、少年はいたずらっぽく微笑んだ。
私達は短い間に、いろんな話をしていた。この公園にある猫の集会所がある話や大学や友達の話など、どの話も少年は目を輝かせて話を聞いていた。子供のはずなのに、妙に大人っぽい少年。とても不思議な子だと思った。
「あっ!雨が止んじゃう!」
ピクニックを始めてしばらくたった時に、少年が空を見て慌てるように言った。空を見ると、小雨になってきていて、少し雲が明るくなっていた。
「本当だ。そろそろやむね」
「うん。雨が止むまでに帰るって約束なんだ」
「あっ、そうなんだ。ごめんね、なんか話こんじゃって」
「ううん。僕もお姉さんと話せて楽しかった」
少年はてきぱき片づけて、バスケットに荷物を詰めて抱えた。
「あの、お姉さん」
「何?」
少年は俯いて手をもじもじさせて何かをためらっていた。
しかし、決意したように、私を目を見て言った。
「今度の雨の日、また一緒にピクニックにしませんか」
「え?」
「楽しかったから、またお話したなって…ダメ?」
不安そうに少年の瞳は揺れていた。ほっとおけなくて、にっこりと笑って彼に言った。
「いいよ。いつにしょうか」
ぱああと少年の顔が笑顔になり、私達は次の休日が雨だと確認してその日に
ピクニックをすることにした。
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