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ご飯を食べ終わり、私はデザートにバルトが持ってきたプリンを食べていた。バルトはニコニコしながら、私の食べる姿を隣で見ている。 「バルト君はプリンを食べないの?」 食べにくく感じて、バルトに話しかけた。 「うん。僕にはメインディッシュが残っているから」 「メインディッシュ?」 「そう!」 バルトは立ち上がって小さい体で私を後ろから抱きしめた。びっくりしたが、母親に甘えているような感覚なのだろうと思い、されるがままになった。 「琴絵さん、あのね。前に雨の日が好きだからピクニックするって僕言ったよね?」 「うん」 「あれね、嘘なんだ。本当は…」 「…本当は?」 「晴れの日には外に出られないんだ。日の光を浴びると、消えてしまうから」 「え…」 「僕は…吸血鬼だから」 「いたっ」 突然、首筋に痛みが走った。だけど、それは一瞬だけでどんどん頭がぼんやりしてくる。 「バ…ルト…」 意識がなくなっていく中、私は彼の名を呼んだ。 「琴絵さん、大好きだよ。永遠に」 少年でなく大人びた寂しい彼の笑顔を見て、懐かしく感じた。もっと見たいと思っている感情を無視し、私は意識を失った。
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