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私はほんの数秒、その場に立ち尽くしたけれどのっそりと商店街の方に足を向けた。
「……」
(えっと…今のは一体)
つい先刻交わした会話を反芻する。
陽大さんに飲みに誘われた。誘われたけれど断る気満々だった。だけど──
『実は宗介と約束しているんだけどさ、宗介がいきなり彼女連れて行くっていう話になって、おい、いつの間に彼女なんて出来たんだ!って驚いてさぁ』
(彼女…連れて行くって…)
一瞬それは私のことかと思ったけれど
『なんでも同い歳の同業者だって惚気てさぁー。そんでオレもつい勢いで、じゃあオレも彼女連れて行く!って言っちゃって』
続く陽大さんの言葉から私であるはずのない彼女だった。
(え?え…?ちょ、ちょっと待って…?)
彼女?
彼女を連れて行く?
彼女……って誰?
(宗介さんの彼女って…誰のことをいっているの?!)
混乱する頭を抱えながら私は一体どうやって買い物を済ませ家に帰って来たのか分からないままリビングのソファにボーッと座っていた。
辺りが暗くなって来た頃、ようやく私の意識は此方側に戻って来た。
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