記念の告白

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記念の告白

暗い廊下。憂鬱な気持ち。いつの間にか外は真っ暗。あれから一時間が経った。そろそろ、あの部屋へ向かわなければ。 座り込んだ俺の脇に、無造作に置いた鉄鎚と大きな釘が何十本も入ったアルミケースがある。 鉄鎚にはところどころ赤黒い染みが付き、それがまた一層、俺の気持ちを沈ませた。だが、やるしかない。 萎む心を奮起させ、俺は鉄鎚とアルミケースを手に取り、立ち上がる。そして、廊下の奥、鍵付きのドアを開け、中に入った。 電気を点けると、部屋の真ん中にある椅子に座らされた男の姿が、視界に映り込んだ。 男の両手は後ろ手にし、椅子に縛り付けてある。両足も、裸足のまま椅子の脚にそれぞれ縛ってあるため、身動きは取れない。 苦痛に歪む醜い顔を見たくなくて、頭から首にかけてすっぽりと布袋を被せてあるため、いま見た段階では、生きているのか死んでいるのか分からない状況であった。 俺は男に近付き、布袋を乱暴に剥ぎ取る。男は、瞼越しに突如眩しくなった視界に顔を顰め、瞬きを何度か繰り返したあと俺を見た。 「あ、おはようございます」 にこやかに笑う顔を、思い切りぶん殴った。 二十代半ばほどの年齢だが、童顔であるその顔はにこやかな表情を崩さないまま、俺を見据えた。 「朝の挨拶、パンチ効いてますね。あ、いまのジョークのつもりじゃないです」 「黙れ」 俺はもう一発殴りたいのを堪え、アルミケースから釘を一本取り出す。鉄鎚を構え、男の足の甲に釘を押し付けた。 「言え。俺の娘はどこにいる?」 「娘さん、一歳でしたっけ? 一人で歩ける年齢じゃないですよねー」 釘を、打ち付けた。鉄鎚を思い切り振り被り、釘が床に達するまで、何度も、何度も。 男は一瞬だけ身体を跳ねさせたが、その表情は崩れない。 この男は、俺の娘を誘拐した。娘の安否は、分からない。この男だけがのこのこと俺の前に現れた。そして、まるでゲームを楽しむかのように俺の拷問を受けている。 俺の方が、参ってしまいそうだ。拷問なんて、俺の人生には関係ないものだと思っていたのに。
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