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そんな勘佐を出迎えたのは、変わり果てた里の姿だった。水は濁り、田畑は荒れ、草木は枯れ腐っていた。
人の姿は無く、勘佐の記憶にあった家族も財も全て跡形もなく消え去っていた。
呆然としつつも、体が何故だか自然と朽ち果てた蔵へと向かった勘佐は、自分が幼き頃、よく膝を抱えて夜を明かした一角で、一振りの刀を見付ける。
これだけ里が、家が、蔵が荒らされていたのに何故か無事だった刀。
勘佐はその刀を掴んで、里を後にしたのであった。
それから、勘佐はその刀で人を斬った。生きる為。身を守る為。逃げる為。理由は色々あったが、とにかく人を斬った。
やがて勘佐は刀の腕では並ぶ者の居ない存在として認知されていた。
その知名は勘佐が食って遊ぶには困らない金をもたらした。
すると途端に、勘佐は退屈になった。
それからというもの、勘佐は日がな一日酒を飲みながら、暇さえあれば人の生きる理由なんていうものを考えるようになっていた。
そんな折、根城にしていた居酒屋に義之助がふらりとやってきた。
強者の匂い。孤独の匂い。血の匂い。自分と同じ匂いのする義之助と、勘佐が打ち解けるには大した時間は必要でなかった。
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