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その目に捉える男は、店の壁にしな垂れかかり、昼下がりだというのにすっかりご機嫌の様子。
頭はぼさぼさに伸び散らかし、衣服は乱れ、猪口に注いだ酒の一滴をも惜しむかのように、猫のように背を丸めてはちびちびと啜っている。
傍から見ると、とても腕の立つ用心棒とは思い難い。
しかし、──奸斬の座しているすぐ側まで、言うならば奸斬の間合いの中にまで来たとき、馬鞍戸は思わず一歩下がって、身体に寒いものが走るのを感じた。
腐っても腕に覚えのある馬鞍戸。肌で得る直感に気持ちが逸る。
酒では隠せない狂気の臭い。
「頼みがある」
そう告げた時、にやっと笑った奸斬の醒めた目を見て、馬鞍戸は「此奴で相違ない」と、生唾を飲み込んだ。
額を伝った脂汗が、ぽたりと床に小さな染みを作った。
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