逢嘉祢の章

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 そんな乙女心を、しかし馬鞍戸は許さなかった。  武家の女はこうあれ。  仇討ちを志す人間はこうあれ。  家名を無くしたとは言え、逢嘉祢と馬鞍戸は主従関係。  主を主とも思わない馬鞍戸の態度を見せられるたび、逢嘉祢は素直に頷きながら、心中舌を出していた。  ──どうだっていい。  逢嘉祢の結論はいつもそうだった。  羽椿の名も、それに囚われる馬鞍戸も、何もわからず連れ回される徒治丸も、何もわからないというのであれば徒治丸と大差ない逢嘉祢自身も。  逢嘉祢はいつもどうだっていいと思っていた。  それでも旅を続ける理由。  それは、何も告げる事無く去ってしまった義之助の本心をただ知りたい──。それだけだった。
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