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3月-②
3月-②
画一的な紺ブレザーのひしめく教室。
「ぎゃぁああ意味無くじゃない、意味咲くだった」
机に突っ伏した。
「芋たん、どうしたのじゃ?」
米っちが頭をぽんぽんしてくる。
「自分で考えた語呂合わせの罠に引っかかった」
1379年って書いた。絶対。
「某、塾で習った、いざサンキューで覚えたぞい。戦争開始なのに、何が有難うなのか」
「英国目線で、仏国これから領土マジありがとー的な煽り?」
「あー英国皮肉屋っぽいとこありそうぞ」
「米っちはどうなのさ」
「某、世界史大好物。カノッサの屈辱とか、言葉の響きだけで、とても分厚い薄い本が書けそうでな」
キリッ、と顔の横でピースを作った。
「羨ましい。もう駄目。世界史玉砕。自我崩壊」
「芋たぁぁあん!自分をしっかり保つのだ!立て、立つんだ芋!」
「その渾名叫ばないで……」
苗字、妹山だけど、別に妹じゃないし、逆に姉だし。どうせ芋臭い顔だけど。
本当、この苗字意味分かんない。自分が何なのかも分かんない。
「切り替えてこうぞ!次の英語で挽回すれば良い」
「うわまた英国!ムカつく」
「遠く離れし極東の国のテストにやたら頻出してくるとは、凄いのう」
「日本が世界征服して、日本語を公用語にしていれば、こんな目に遭わなかったのに」
「よっ、魔王!」
古より、存在すると知り得る限りの領土を征服しようと野心を抱いた偉人達は大勢いるから、世界征服=魔王でも無いと思うけど……。
「魔王になったら、もう勉強しなくていいかな」
「世界統治とか人心掌握の勉強しなきゃかも?」
「自省録でも読むべき?」
「マルクス・アウレリウス・アントニヌス!」
米っちが、いたずらっぽく笑窪を浮かべ笑う。
世界史で、一番長いんじゃないかって単語。でも妙に覚えてしまう単語。
米里、席戻れ、と先生がこっちを見ていた。
「わわ、5分前着席であった」
米っちが小走りに座席に向かう。
たまに周りが見えなくなる子。私もうっかりしてたけど。
シャーペンのお尻をカチカチ押し、芯を確認した。
魔王になれたら、テストと、トラックに目障りな装飾と音響施すの、禁止しよう。
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